最初に見つかったのがクロマツ林だったため、当初はクロマツ林に生育する種と思われていたが、近年では埋立地の工場緑地や都市公園、1,500mをこえる山地の低木林など、幅広い環境で見つかっている。
上の写真は登山道脇で撮影したものである。登山客は相当いたが、私が写真を撮っていても気にする人はおらず、皆、興味がないのだろうか。話しかけられたところで、私の対話力のなさが露呈するだけであるが。
さて、このクゲヌマランであるが、これまでギンランCephalanthera erecta var. erecta や、ササバギンランC. longibracteata と混同されてきており、少し古いWebページなどでは、ギンラン、ササバギンランとされながら、クゲヌマランと思しき写真をいくつか見かける。
距の有無で区別されることが多いが、ギンランにも距の発達しない個体や、六弁花個体のヤビツギンランC. erecta f. があり、これだけで同定することはできない。
距が著しく短いことに加えて、出芽~開花時に植物体に皺やざらつきが少なく、透明感というか、艶っぽさがあるのが特徴であり、こういった複数の特徴と併せての同定が必要である。
このあたりは、『日本のラン ハンドブック ①低地・低山編(文一総合出版、2015)』が詳しい。『改訂新版 日本の野生植物1(平凡社、2015)』では距の長さしか書かれていない。
別名はエゾギンランとされているが、"GreenList ver. 1.01"ではエゾギンランはクゲヌマランとは別で、C. erecta var. elegansと、ギンランの変種となっている。実際のところどうなのか、詳細は不詳。
ちなみに、葉はササバギンランほどは細くなく、かなり丸いものが多いように思う。しかし、葉が茎をやや抱くため、伸長時に葉が折りたたまれた形となり、細く見えるのだろう。また、葉は充実するとかなりの硬さがある。そのためか、充実した個体では葉が裂けてしまっているものをよく見かける。なお、花自体はササバギンランに似るが、私が見た個体は、いずれも苞葉は小さく、短かかった。
(更新日:2021/01/05)